ニュースのかんたんな解説
2025年3月27日、山梨県の山梨中央銀行、静岡県の静岡銀行、長野県の八十二銀行という3つの地方銀行が、広範な業務で協力する包括業務提携を結ぶと発表しましたasahi.com。この提携は「富士山・アルプスアライアンス」と名付けられていますasahi.com。
名前のとおり、富士山を擁する山梨・静岡と、アルプスを擁する長野という隣接3県の地銀がタッグを組む形です。具体的には、預金・融資など銀行の基本業務から、新商品の開発、企業向けサービス、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進など様々な分野で3行が連携する予定です。実は静岡銀行と山梨中央銀行は2020年から既に業務提携を結んでおり、これまで金融商品の仲介や協調融資、取引先企業同士のマッチング支援などで協力関係にありましたasahi.com。今回そこに八十二銀行が新たに加わることで提携の枠組みが拡大し、3行で地域経済を盛り上げていこうという狙いです。なお、経営統合(合併)ではなく提携という形のため、3行はそれぞれ独立性を保ったまま協力するとしていますasahi.com。
将来的な経営統合については現時点で否定していますが、提携を深める中でより踏み込んだ協力関係に発展する可能性も残されています。
背景にある世の中の動き(潮流)
このニュースの背景には、地方銀行を取り巻く環境変化があります。少子高齢化や東京圏への人口集中により、地方では人口減少が進み、地元企業の数も減少傾向です。その結果、地方銀行にとっては融資先や預金者が減り、ビジネス規模の縮小が避けられません。また超低金利環境が長く続いたことで貸出金利も低水準にとどまり、銀行の伝統的な収益源である利ざや(貸出金利-調達金利)は縮小していました。こうした中、地方銀行の中には生き残りをかけて統合・再編を模索する動きが加速しています。
政府・金融庁も地域金融再編を後押ししており、実際ここ数年で地銀同士の合併や持株会社統合の例が増えてきました。例えば、福岡地盤の十八親和銀行と筑邦銀行が経営統合したり、東北では青森銀行とみちのく銀行が合併して「青森みちのく銀行」が誕生したりといった具合です。今回の山梨・静岡・長野3行の場合、完全な合併ではなく提携という比較的緩やかな形態を選んでいる点が特徴です。提携であればそれぞれの銀行のブランドや意思決定の独立性を保ちつつ、必要な部分で協力できます。3行は地理的に接していて経済圏も隣接していますから、提携メリットは大きいでしょう。たとえばATMネットワークの相互開放で顧客利便性を上げたり、大企業への融資で協調融資団を組んでリスクを分散したり、新サービスを共同開発してコストをシェアしたり、といったシナジーが見込まれます。
また3行共同で地域の魅力発信や企業誘致を行い、人や企業が地域に関わる「関係人口」を増やす取り組みも計画されていますasahi.com。これは、3県が連携して観光・移住・二拠点生活などを促進し、地域経済を活性化させようという狙いです。要するに今回の提携は、地方銀行が単独では対応しきれない人口減・市場縮小という課題にチームで立ち向かう試みと言えます。
私たちへの影響や気づき
地方銀行の提携は、一見すると自分たちの生活に直接関係ないように思えるかもしれません。しかし、地方で働く人や企業にとって金融インフラは欠かせない土台です。銀行同士が協力して経営を安定させれば、地域の企業への融資姿勢が維持・強化されたり、新たなサービス展開でビジネスチャンスが広がったりする可能性があります。
たとえば3行の提携によって、山梨・静岡・長野にまたがるエリアで事業を展開する企業は融資を受けやすくなるかもしれません。また個人にとっても、将来的に3行のATM手数料が共通化・無料化されたり、各行の得意分野を活かした新しい金融商品が利用できるようになるといったメリットが期待できます。転職を考える立場から見ると、銀行業界や地域経済の動向にアンテナを張っていること自体がアピール材料になります。例えば金融業界志望でなくとも、「人口減少で地銀が再編を迫られているニュースを見て、自分の地元でも~と感じた」と話題に出せば、時事に関心を持ち自分事として捉えている積極性を示せます。仮に銀行や地域の企業への転職を考えていなくても、業界再編や企業提携のニュースから学べることは多いです。企業同士が生き残りを図る戦略や、協業によるメリット・デメリットを考えてみると、自分の働く業界でも今後起こり得る変化を想像できます。「うちの業界でも将来ライバル企業同士が提携するかも?」と想像力を巡らせておくと、いざ自社の戦略を考える場面でも役立つでしょう。
要は、一見自分に関係なさそうな地域経済ニュースも、ビジネスパーソンとして読み解けばヒントがあるということです。この視点を持ってニュースを読むと、転職面接でも「最近気になるニュース」として語れるネタになりますし、経済感覚の鋭い人だと評価されるかもしれません。